偽装婚約~秘密の関係~
『はあ?!見栄なんて張ってねーよ』
ジュウゴの野郎、俺のことなめてんのか?
『見栄、張ってんじゃねーか!
お前、あずさのこと、思い出にできてなんかねーじゃん』
『できてるよ!
つーかしたんだよ!
お前に何が分かんだ!?』
必死だったんだ。
アイツのことを忘れよう、って。
だから俺は、アイツとの思い出はすべて、処分した。
そして頭の中に残るすべての記憶を心の奥に閉じ込めた。
『楽しかったことを無理矢理思い出にしよう、っていう時点でもうそれは思い出にできてねーんだよ。
思い出つーのは自然にするもんなんだからな』
『じゃあ…っ…』
声が掠れる。
『じゃあ俺は…どうすればよかったんだよっ!!!』
あの頃は必死で。夢中で。
アイツを守りたい一心で。
だから、頑張ったのに。
それなのに、ジュウゴは簡単に否定しやがった。
なら、教えろよ、ジュウゴ。
何が正解だったのか。
教えてくれよ。