偽装婚約~秘密の関係~
瑞季は珍しく動揺した素振りを見せる。
『どうした?
何を驚いてる?』
『いえ、晴弥様がそんなことをおっしゃるとは思っていなかったもので』
正直なヤツだ、と心の中で呟く。
『俺だって人間だ。
できるだけ人の悲しむ顔は見たくないんだよ』
『…失礼しました』
頭を下げる瑞季。
『で、なんかいい方法…ないか?』
『私が答えずとも、晴弥様の中にもう答えはお有りなんでは?』
その瑞季の答えにふっと笑ってしまった。
さすが、瑞季だ。
俺との付き合いが長いだけある。
俺の考え、全て見抜いてやがるな。
『ああ、瑞季の言う通りだ。
とりあえず沙羅の恋人のこと、もう少し詳しく調べといてくれ』
『かしこまりました』
瑞季が出て行き、ふぅ、と息を吐く。
なんかいつもの俺じゃない。
微妙に、ペースが乱されてる気がする。
恐らく…まだ会ったこともない『鬼灯沙羅』のせいだろう。
あ、それとジュウゴ。
アイツが沙羅は『あずさ』に似てる、なんて言うから。
だから、余計に沙羅のことが頭を占めるんだ。
ジュウゴのバカ野郎。