偽装婚約~秘密の関係~
『そもそも、お前らの別れ方がいけなかったんだ』
ジュウゴがボソッと小さな声で呟いた。
『お互いが納得できてないのにお前らは別れた。
どっちにもまだスキって感情があったのに、だ。
そんな状態で別れて、今までこうならなかったことがむしろ不思議なくらいだよ…』
ジュウゴが言ったこうならなかった、というのはよりを戻す、という意味だろう。
『なあ、晴弥。
俺、お前を怒る資格なんてなかったな、悪い。』
ジュウゴはイスに座った。
そして鍵盤に手を置く。
そこからしなやかに動くジュウゴの指。
曲名は知らないがどこかで聞いたことのある曲だった。
それを弾いているジュウゴの横顔は思案顔で。
やっぱりコイツ、いいヤツなんだな。
こんなに俺と沙羅のために悩んでくれてる。
口は悪いし、うるさいけど。
でも、コイツとツルんでて良かった。