偽装婚約~秘密の関係~





『浅井社長』


小太りな背中に声をかける。


振り返った浅井新社長は俺を見て笑顔になった。



『おー!遊馬電器の晴弥くんじゃないか!

久々だなぁ。
随分大きくなって!』


『ご無沙汰しております。

本日は社長就任、おめでとうございます。』


頭を下げる。

…っておい!

なんでお前、頭下げないんだよ!


沙羅が突っ立っているのが見えて、慌てて手を引っ張る。

そうすると沙羅はハッとして頭を下げた。



『おいおい、やめてくれよ、晴弥くん』

相変わらず、声がデカイな、この人は。



『そう言えばお隣のべっぴんさんはどなたかな?』


『ご紹介が遅れて申し訳ありません。

僕の婚約者の』


「鬼灯沙羅と申します。

よろしくお願いします。」


沙羅がニコッと笑顔を見せる。

作り笑い…85点、ってところか。



『晴弥くん!

いい娘を捕まえたじゃないか~』



『いえいえ。そんな』


外見はそこそこですが、中身はなかなか凄まじいですよ。


と、心の中で続けた。







< 98 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop