偽装婚約~秘密の関係~
『浅井社長』
小太りな背中に声をかける。
振り返った浅井新社長は俺を見て笑顔になった。
『おー!遊馬電器の晴弥くんじゃないか!
久々だなぁ。
随分大きくなって!』
『ご無沙汰しております。
本日は社長就任、おめでとうございます。』
頭を下げる。
…っておい!
なんでお前、頭下げないんだよ!
沙羅が突っ立っているのが見えて、慌てて手を引っ張る。
そうすると沙羅はハッとして頭を下げた。
『おいおい、やめてくれよ、晴弥くん』
相変わらず、声がデカイな、この人は。
『そう言えばお隣のべっぴんさんはどなたかな?』
『ご紹介が遅れて申し訳ありません。
僕の婚約者の』
「鬼灯沙羅と申します。
よろしくお願いします。」
沙羅がニコッと笑顔を見せる。
作り笑い…85点、ってところか。
『晴弥くん!
いい娘を捕まえたじゃないか~』
『いえいえ。そんな』
外見はそこそこですが、中身はなかなか凄まじいですよ。
と、心の中で続けた。