偽装婚約~秘密の関係~
新社長へのあいさつを終わらせた俺はとりあえず沙羅を解放する。
ここには学校の知り合いも何人かいるし、
芽依もジュウゴもいる。
沙羅をほっぽり出したところでなんの問題もないだろう。
『やあ、晴弥くん。
どうかね?近頃、遊馬電器は』
『お久しぶりです、三井社長。
おかげさまで、経営状態は安定しています』
そんな会話を何度、交わしただろう。
そろそろあいさつにも疲れて、
パーティにうんざりしていたときだった。
部屋の隅で壁にもたれかかっていると…
『…どうした、あずさ』
あずさが俺の目の前に現れた。
「ちょっと、抜け出さない?」
『俺はいい。
抜け出したいなら1人で抜け出せ』
あえて冷たい言葉をあずさに浴びせる。
「そんな冷たいこと言わないでよ。
ちょっとだけ。
お願い。付き合って?」
あずさは少し首を傾げ、俺を見上げる。
『…分かった。
ちょっとだけだからな』
…ああ、ホントに俺はあずさに弱い。