Drawing~君と僕と~
僕は一瞬息をするのを忘れた。

「な、なんてこと言ってるのさ・・・そんな・・・」

「別に、何もおかしいことは言ってないわ。本気だもの。もし止めようとしたり、誰かに言ったら許さないわよ。」

そういってきつく睨み付けてくる。

「でもその絵はどうするつもりなのさ」

「コンテストに出すの。結果なんてどうでもよくて、ただ出せるだけでいいのよ。
もちろん、私が死んだあとに誰かに出してもらうわ。あなたでもいいかも。」

「死んでから?」

「そう、死んでから。」

そういって沖野さんは僕から目を離し、窓の外を見ている。なぜ死んでからなのかはわからないが、沖野さんにとって「結果」は必要ないものらしい。僕には理解ができなかった。

「でも待って、なんでそんな、人に言って欲しくないことを僕に言うの?」

「だってあなた、そういうこと言われても相談できる人いないでしょ」

「うっ・・・」

当たってるけど、ちょっと落ち込む。

「そして私は委員長で優等生、そんな私が死ぬだなんて、転校してきてまだ1ヶ月も経たないあなたの言うことなんて誰が信じる?」

ごもっともな話だ。

「まぁそれよりは・・・」

「それよりは?」

「こんな話をしたのは、成瀬君と私はちょっと、似てるところがあると思ったから、かな。」

「・・・僕と?沖野さんが?」

「えぇ」

僕なんかに、ちょっとでも沖野さんと似てるところがあるんだろうか?

考えてみたけど全然わからない



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