Drawing~君と僕と~
「あれ・・・?」
そこには、本来あるべき図書室の景色はまったくと言っていいほどなかった。
本を読むための長机や、貸し出し机や、本棚の中にはメインであるはずの本すらない。
役目を失い埃をかぶった本棚が、ただむなしく立っているだけだった。
「なんだここ・・・どうみても図書室じゃないし・・・でも表の標識には図書室って書いてあったし・・・」
そう思いながら部屋の中央を見ると、キャンバスの立てかけられた鉄製のイーゼルがぽつんと置かれている。
どうやら、誰かがここで絵を描いているらしい。しかし今は当人らしき人の姿は見当たらず、来たとき同様この異様な図書室の中は恐ろしい程にがらんとしていた。
中央のイーゼルは窓に顔を向けていて、こちらからは見ることができない。
僕はイーゼルの向こうが気になって、恐る恐る中に足を踏み入れようと一歩踏み出した。
その時―