Drawing~君と僕と~
「この教室が使われなくなった理由はわかったんだけど、どうして人が死んだ場所でその・・・絵を描いているの?」

イーゼルを見ながら僕は尋ねた。

「私がどこで絵を描こうと私の勝手じゃない。」

「まぁそうなんだけど」僕は少し言葉を濁す。

「・・・私の叔母さん、ここの理事長なの。美術室みたいに人がいるところはうるさくて嫌だから部に入ってないのに、わざわざ美術室行って絵を描かせてくださいじゃ本末転倒でしょ。それでお願いしてここを貸してもらってるのよ。」

「なるほど・・・」

そういえば理事長、沖野って苗字だったな・・・と思いながら、僕はイーゼルに近づいていった。

「何の絵を描いてるの?」

「そんなにたいしたものでもないわよ。」

「そんなの関係ないよ。ただ、沖野さんが描く絵ってどんなのなんだろうと思って。見せ
てもらっても大丈夫かな?」

沖野さんはしばらく考えている。

「・・・いいわよ。そのかわり、私がここで絵を描いていることは誰にも言わないで。
他の先生にも。一応叔母さん・・・理事長に許可はもらってるけど、あまり知られたくないのよ」

「わかった。誰にも言わない。」僕は黙って頷き、絵の描かれている方へ静かに回り込んだ。

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