Drawing~君と僕と~
そこには1人の少女が描かれ、西日を浴びてキャンパス全体が淡く光っていた。
少しクセのかかった髪を肩まで伸ばした少女が、両手を前に組み合わせてこちらを見て微笑んでいる絵。
背景の下はダークブラウンやターコイズ、鮮やかな赤が混ざり合い、不思議な魚が組んだ手の当たりを泳いでいる。
背景は上にあがるにつれて穏やかな青空に変わり、そこにはいくつかの分厚い雲がちぎれたりくっついたりして漂っていた。
同い年でここまで描ける人を、僕は知らない。
昔いた学校の人に上手な人はいたが、沖野さんには及ばなかったように思う。
細部まで細かく丁寧に描かれた顔色の鮮やかさ、服のしわ、影の表現、どれもとても繊細に丁寧に描かれ、今ここにその少女が存在するような錯覚に陥ってしまう。
微笑んでいるのに、何故か悲しい。沖野さんの絵はそんな不思議な絵だった。
「本当にすごいね。こんなに綺麗な絵、みたことないよ」
「もっとすごい人なんて、いくらでもいるわよ。」
「でも、僕からすれば本当にすごい絵なんだ。」
そう言って、僕はまた絵に夢中になる。
「成瀬君」
「何?」
「私、この絵を描いたら死ぬの」
少しクセのかかった髪を肩まで伸ばした少女が、両手を前に組み合わせてこちらを見て微笑んでいる絵。
背景の下はダークブラウンやターコイズ、鮮やかな赤が混ざり合い、不思議な魚が組んだ手の当たりを泳いでいる。
背景は上にあがるにつれて穏やかな青空に変わり、そこにはいくつかの分厚い雲がちぎれたりくっついたりして漂っていた。
同い年でここまで描ける人を、僕は知らない。
昔いた学校の人に上手な人はいたが、沖野さんには及ばなかったように思う。
細部まで細かく丁寧に描かれた顔色の鮮やかさ、服のしわ、影の表現、どれもとても繊細に丁寧に描かれ、今ここにその少女が存在するような錯覚に陥ってしまう。
微笑んでいるのに、何故か悲しい。沖野さんの絵はそんな不思議な絵だった。
「本当にすごいね。こんなに綺麗な絵、みたことないよ」
「もっとすごい人なんて、いくらでもいるわよ。」
「でも、僕からすれば本当にすごい絵なんだ。」
そう言って、僕はまた絵に夢中になる。
「成瀬君」
「何?」
「私、この絵を描いたら死ぬの」