こんな僕たち私たち
「前に勝手にかっこつけたら怒って泣かれたから」

 …あぁ。あれか。ほんの十数日前、12月の初め。私の代わりに黒岩先輩のビンタをくらった七緒へ、泣きながら言った言葉。

『かっこつけすぎなんだよバカー!』

 …我ながら、本当の本当に可愛くない。

「どうぞ。気の済むまでかっこつけちゃってくださいな」

 もう泣かないからね。

「では。……禄朗」

「はいっ」

 白い歯を見せ、きっと奴にとっては精一杯の男らしい笑顔――しかし周りからすればやっぱり美少女スマイル――を見せる七緒。

 きらりーん、とか古い効果音が入りそうだ。

「……男の拳は喧嘩のためにあるんじゃねぇんだゼ」



 …………。

「ぶっ」

「あっ、てっめぇ心都、今笑ったろ!?」

「や、笑ってな…っゲホゴホ」

「咳で誤魔化したけど今のは絶対笑った!!」

 ごめん、七ちゃん。

 だってこれは、もう。

「くくく…っ男の拳はって!!しかも最後ゼって!あはははは!!」

 笑うしかないでしょう。

「笑ってんなよ!」

 真っ赤な顔でムキになる七緒。どうやら、相当とっておきな台詞だったらしい。あぁ今度は笑いすぎて涙が。
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