こんな僕たち私たち
 そういやさっきから反応がない禄朗は、と思い彼の顔を見遣ると。

「…七緒先輩、続きは!!」

 禄朗がすごい勢いで七緒に訊ねる。

「え、続き?」

「そっス!!その言葉の続きっス!男の拳は、なんのためにあるんスかっ!!」

 七緒の言葉は、私とは比べものにならないくらい禄朗の心に響いたらしかった。

 一方、七緒はもう「かっこつける」事を諦めたようだ。いつも通りの美少女顔で答える。

「それは人それぞれだよ」

「それぞれ…っスか」

「うん」

 それぞれ。その答えは結構難しい。

 禄朗は自分の中で言葉を消化するように、ゆっくり頷いた。

「じゃあ…七緒先輩の拳はなんのためにあるんスか」

「へっ俺!?」

 予想外の自分への質問。七緒は今度こそ困った顔になる。

 そして、しばらく考え込んでいたかと思うと。

 質問の答えを、とても短く、禄朗に耳打ちした。…なんだかやたら乙女ちっくな光景だ。

「そうっスか──わかりました!!ありがとうございましたっ!!」

 ぶん、と風を切るくらいに激しい一礼。

 そして禄朗はスキップ混じりに1年生の教室方面へ駆けていった。
















「カッコヨカッタネ七緒☆」

「…うっせぇな。わざとらしいんだよ」

「いやいや本当に。私の中の名言集に刻み込まれたよ。ねぇさっき禄朗になんて言ったの?」
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