こんな僕たち私たち
2章-12<やる時はやる女と、幸せ>
 教室へ戻った私に、美里はにっこりと微笑んだ。

「おかえり、心都。相変わらず素敵なナチュラルヘアーね」

 その目は間違いなく、笑っていなかった。

「いや、もうホント…すんませんでした…」

 教室を出た本来の目的を思い出した私は、背中に嫌な感じの汗をかきながら美里に手を合わせた。

「えー?別に私は心都に謝られる事なんかないわよ」

 目だけが笑っていない顔のまま、美里が言う。

「だってせっかく直してこいってすすめてくれたのにまだ…」
「私はただ、頭が爆発してたら心都のためによろしくないと思って忠告しただけよ。心都が直さなかったところで私に害が及ぶわけじゃないし。謝る事なんかなーんにもないのよ」

 更ににっこりと美里。

「……う」

 こういう時の美里は、怖いくらいにドライ。っていうか普通に怖い。

「…い、今すぐ直します」

 もう鏡なんか見なくていい。そんなの気にしていられるか。

 美里の射るような視線(これがかなり痛い)を受けながら、私は手ぐしでワイルドに髪を整え始めた。いや、何しろ鏡やらくしやらを携帯する習慣がないもんで。

 ――恋する女本格的に失格、か…?



















「さっきよりはマシな頭になったわね、とりあえず」

 怒れる女神美里様からやっとお許しが出たのは、2時間目終了後の休憩時間だった。

「お世話になりましたー」

 思わず美里の机の前で頭を下げると、

「ほらすぐそうやって安心するー。まだ人並みに寝癖はなくなった、ってだけよ。……ねぇ心都、頼むからクリスマスパーティの日だけは爆発頭で現れないでね?そんなんじゃ生まれる愛も生まれないわよ」

 彼女が不安げな色を宿した瞳で私を見る。
< 104 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop