こんな僕たち私たち
 心配してくれているのはとてもとてもありがたい。が、私の頭の中では今美里が発したある単語だけが強烈な主張を繰り返していた。

「愛……愛かぁ…いーなその響き…」

 うっとりしすぎて別世界へ行きそうになった意識を慌てて引き戻す。げんなりとした美里の目線が痛かったからだ。

「だ、だいじょーぶ!心配しないで美里。当日はバッチシ☆」

「へぇ」

「そんな疑わしい目で見ないでよ。言っとくけど私、やる時はやる女ヨ?」

「ふぅん」

 ……さっきから、反応薄っ。ぐっと立てた親指のやり場のなさが虚しい。

「そこまで言うんなら心都」

 と、美里がお得意の小悪魔スマイルで微笑んだ。

 その白い腕をゆっくりと私の肩に回し、甘ーい声で囁く。

「クリスマスイヴはそれなりの行動を起こしてくれるんでしょうねぇ?」

「こ…行動って!?」

 美里、ますますにっこり。こうなるともう小悪魔じゃなくただの悪魔にしか見えない。

「そうね例えば、告白とか、告白とかー…あと告白とか?」

「結局告白じゃないですか……って告白!?そ、そんないきなり!!」

 ヤバい、頭部に血液上昇中。

 そんな私とは対照的に、美里はふふふと悪戯っぽく笑い、

「冗談よ。心都は心都でちゃんと決めてるんでしょ?告白の条件」

 白い腕が私の肩からはずれる。首周りが自由になった私は、美里の問いにこっくりと頷いた。

「…『いつか、私が七緒より可愛くなれたら。そんでもってあの部活命の鈍感男をちょっとドキドキさせる事が出来たら。』」

 その時は、ちゃんと伝える。

 泣いて喚いて殴られかけたほんの十数日前、冬の校庭を走りながら決めた自分の中での目標。

 我ながら、果てしなく無謀だと思う。

「じゃあ今はまだ全然告白できないわね」

「そーそーまだ私より七緒の方が何百倍も可愛いから――って美里さん?」

 素でハッキリ言いすぎです。
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