こんな僕たち私たち
「でもね心都、告白とまではいかなくても、ちょーっといい感じの雰囲気でいい感じに気のきいた言葉を囁き合ったりは出来るんじゃないの?」

「えー…」

 そりゃあ、クリスマスが近付くにつれてそんな感じの理想(妄想?)が何度も頭を駆け巡った事は否定できない。

 でも、なんだか都合よくいく気がしないのも事実。

 大体「囁き合う」っていうのが問題だ。仮に、クリスマスのきらびやかな雰囲気に押し流された私が囁きまくったとしても、七緒はどうだろう。

 やっぱり奴の「いい言葉」は、『男の拳は喧嘩のためにあるんじゃねぇんだゼ』くらいが限界なのかもしれない。

 …いや、別に何か期待しているわけでもないけれど。

 神のみぞ知るクリスマス。

 とりあえずもう二度と、酔って物真似しまくるような事態だけは避けたいものだわ。





















「今日一緒に帰れる?」

 好きな相手からこう言われて、嬉しくない人なんかきっといないんじゃないかな。

 もちろんかく言う私もその1人で。

「あっ、え、今日?私、かっ帰れりゅ」

「ぷっ。噛んでやんの」

 私のぐたぐたな返答を聞いた七緒は、わざとらしく噴き出した。あんたの不意打ちのせいだっての、とはもちろん言い返せない。

 だって、本当に、不意打ちだった。

 かったるい6時間目の数学もHRも終わり、帰り支度をしていた丁度その時。七緒が私の席へやって来て、さっきの無駄に人を惑わす台詞をさらりと口にしたのだ。

「あの、なんで急に…?」

「昨日の続き教えてもらおうと思って。もう冬休みまで1週間切ってんだし!」
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