こんな僕たち私たち
2章-13<観戦と、星空の下>
 重く錆付いた体育館のドアを開くと、そこは12月とは思えないほどの熱気に満ちていた。

 動き回る生徒、大きな掛け声、ボールが跳ねる音。

 もし誰かがこの場をスケッチすれば、完成した絵には「青春」とか直球ど真ん中な題名が付きそう。つまりそれくらい、放課後の体育館の雰囲気は元気溌剌だったのだ。

 今日は柔道部とバレー部が場所を半分ずつ分け練習しているようだ。その周りには、友達待ちか恋人待ちか、はたまた季節外れの入部希望なのか、練習風景を見学している人もちらほらいる。

 そしてついさっき部活を終え、七緒の練習姿を拝むべく体育館へとやってきたこの私。

 とりあえず入り口付近に立ったまま、左側で活動中の柔道部を眺める。どうやら今日は2人ずつ組んでの練習らしい。

 いかにも柔道やってます、って感じのガタイのいい部員の中で、七緒の姿はすぐに発見できた。

「あ。」

 …七緒、小さっ。

 私とも大して変わらない身長や肩幅に、照明の光を受け茶色っぽく透ける髪。

 使い古した柔道着さえ着ていなかったら、何の疑いもなく可愛らしい女子マネだと間違えられるだろう。

 しかし、自分よりかなり大柄な練習相手に向かう七緒の表情は真剣そのもので。これから何かを打ち破ろうとする人間独特の、ピンと張り詰めた雰囲気を静かに発していた。真っすぐな瞳は、あの不思議な、人を動けなくする強い眼差しを持っている。
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