こんな僕たち私たち
がさごそと音をたてて、私は植え込みに潜り込む。
学校の裏庭の植え込みは手入れされていなくて伸び放題だから、隠れるのにこれいじょうバッチリな場所ってない。ちょっと寒いけど冬好きの私には心地いいくらい。
でも、隣の美里はそうもいかないらしい。「痛いなー」とか「触んないでよ」とか葉っぱにキレている。色んな意味で、大丈夫だろうか。
でも無理もない。冷たい葉っぱ達は、さっきからちくちくと制服姿の美里の足を突いている。
「だから美里もジャージ着てくればよかったのに……」
「嫌よ、あんなダッサいの」
美里はピンクの唇を尖らせた。今まさにその「ダッサいの」に身を包んで完全防備した私と喋ってるっていうのにお構いなしだ。
「ひっどー」
でも本当は一緒にここまで着いてきてくれただけで大感謝だから、口で言うほど気にしてないんだけど。
「心都こそ何よ。これから修羅場になるかもしれないっていうのにそんなだぼだほジャージ着ちゃって。気合が足りない、気合がっ」
「修羅場って……」
そんな言い方されるとますます緊張が。
動悸を押さえつつ、そっと植え込みの影から顔を出してみる。もう放課後になって十数分たつのに、七緒もラブレターの差出人もまだ来ていない。
「七緒、来ないつもりかな」
「あぁ、それはあるかも。七緒君、いたずらかもって言ってたし」
もしかすると今頃柔道着を着て、おっしゃーやったるぜーと部活に励んでいるかもしれない。まぁ、その方が私にとってはありがたいけど。
でもそんな私の希望はいとも簡単に消え去った。
七緒が来たのだ。