こんな僕たち私たち
黒岩先輩の拍子抜けするような声で、私は危うく前につんのめりそうになった。
危ない危ない、今バレたら一巻の終わりだわ。
「やーん、まつ毛長ーい! もうマジ可愛い。ねぇ、外歩くと女と間違えられてナンパされたりしない?」
「全くないです!」
嘘。私が知る限りで4回はあった。
可哀想に、本人にとっては消したい出来事なんだろう。私にとっては思い出し笑いできる最高のネタだけど。
「そぉー? あたしが男だったら絶対放っておかないのに」
黒岩先輩はそう言うとくすっと笑って、
「ま、女でも放っておかないんだけど」
と付け加えた。恐い。
……ちょっと七緒、何照れちゃってんのよ。頬を染めるな、頬を!
私は、七緒の側の木で猫みたいにガリガリ爪を磨ぎたい衝動にかられた。
いや、いっそあの2人の間にでーんと黒板を置いて、その上に爪を……想像したら鳥肌が立った。
「それで」
黒岩先輩は素敵に微笑みながら、ようやく七緒から顔を離した。
「告白のお返事は考えてくれたのかな?」
「あの、それなんですけど」
今までは先輩がほとんど一方的に喋ってた風だったけど、今度は七緒が口を開く。
「先輩、手紙に名前書いてなかったですよね。…あれで返事期待してるよって言われても、誰だかわかんないのにすぐ返事考えるなんてフツー無理です」
うーん、言われてみれば確かに。
七緒の「やっと言えた」みたいな清々しい顔から察するに、きっとずっとこれを言ってやりたかったんだろう。細かい奴。
「嘘ヤダごめーん! 名前書かない方がドキドキ感あっていいかなーと思ったんだけど。そうだよね、マジごめん。じゃあ返事くれるの明日とかでもいいから」
「いえ」
言葉を遮るように、七緒は低く短く言った。
普段の、「ちょっとハスキーボイスが魅力的な女の子です」って知らない人に紹介すれば通っちゃいそうな声とは、まるで違う。
「俺の返事はもう決まってますから……」
「ほんと? 聞かせてほしいな」
返事考えるの無理って言ったじゃーん、という突っ込みは置いといて。決まってるだなんて七緒、何て返事するんだろう。まさかOKしたりしない…よね?
危ない危ない、今バレたら一巻の終わりだわ。
「やーん、まつ毛長ーい! もうマジ可愛い。ねぇ、外歩くと女と間違えられてナンパされたりしない?」
「全くないです!」
嘘。私が知る限りで4回はあった。
可哀想に、本人にとっては消したい出来事なんだろう。私にとっては思い出し笑いできる最高のネタだけど。
「そぉー? あたしが男だったら絶対放っておかないのに」
黒岩先輩はそう言うとくすっと笑って、
「ま、女でも放っておかないんだけど」
と付け加えた。恐い。
……ちょっと七緒、何照れちゃってんのよ。頬を染めるな、頬を!
私は、七緒の側の木で猫みたいにガリガリ爪を磨ぎたい衝動にかられた。
いや、いっそあの2人の間にでーんと黒板を置いて、その上に爪を……想像したら鳥肌が立った。
「それで」
黒岩先輩は素敵に微笑みながら、ようやく七緒から顔を離した。
「告白のお返事は考えてくれたのかな?」
「あの、それなんですけど」
今までは先輩がほとんど一方的に喋ってた風だったけど、今度は七緒が口を開く。
「先輩、手紙に名前書いてなかったですよね。…あれで返事期待してるよって言われても、誰だかわかんないのにすぐ返事考えるなんてフツー無理です」
うーん、言われてみれば確かに。
七緒の「やっと言えた」みたいな清々しい顔から察するに、きっとずっとこれを言ってやりたかったんだろう。細かい奴。
「嘘ヤダごめーん! 名前書かない方がドキドキ感あっていいかなーと思ったんだけど。そうだよね、マジごめん。じゃあ返事くれるの明日とかでもいいから」
「いえ」
言葉を遮るように、七緒は低く短く言った。
普段の、「ちょっとハスキーボイスが魅力的な女の子です」って知らない人に紹介すれば通っちゃいそうな声とは、まるで違う。
「俺の返事はもう決まってますから……」
「ほんと? 聞かせてほしいな」
返事考えるの無理って言ったじゃーん、という突っ込みは置いといて。決まってるだなんて七緒、何て返事するんだろう。まさかOKしたりしない…よね?