こんな僕たち私たち
「…私、は。」

幼馴染み。

きっとそれ以上でも以下でもないんだろう。悲しいくらいはっきりしている。

ただ、素直にそう言うのが悔しかった。

「…」

普段はこの関係に嫌気が差す事ってあまりない。意識しない分ちょっとした話で馬鹿みたいに盛り上がったりもできるし。結構楽しかったりする。

でも、こんな時は。

こんな時は、半端な距離がどうしようもなく悲しいんだ。

その肩書きじゃ大切な人を守れないから。

ひねくれた私が先輩のキスを邪魔する理由にもならないから。

それが無性に、悔しかった。


「幼馴染みです」

私に代わって答えたその声――七緒だった。

「それ以外は何にもないです」

わかってはいたけど、やっぱり相手の口から直接聞くと結構重いもんがある。

私は意味もなく、足元の土の微妙な茶色のグラデーションに興味を奪われたフリをした。

そしてもちろんそんな回答に先輩が納得するはずもない。

「はぁ!?何それ、ただの幼馴染みがどうして急に…」

「先輩」

静かに、しかし有無を言わせない口調で、七緒は遮った。

「もう返事は返しました。先輩とは、付き合えません」
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