こんな僕たち私たち
遠回しに『もう解放して下さい』。

それを聞いた黒岩先輩は見ているこっちが痛くなるくらい唇を噛み締め、

「…わかったよ!」

低く乾いた声で言うと踵を返して去っていった。

だけど私は、どうしても落ち着いた気分になれなかった。

だって、歩きだす瞬間の黒岩先輩の目。

私を睨み付けるその目は、事態がこのまま済むわけがない事を物語っていた。

目は口ほどにものを言う、だなんて。そんな言葉、今は信じたくない心境だわ。














先輩がいなくなった後の裏庭には微妙な雰囲気が漂う。

私は再び土を見つめ始め、七緒は不自然に視線を泳がせながら隣につっ立っていた。

沈黙はどんどん濃くなって、逆に空気はますます薄くなっていく。

…出来る事なら今すぐ、風の如く爽やかに走り去りたいです。

美里はまだ隠れてるのかな、と思い植え込みを見てみると案の定彼女は葉っぱの中に埋もれていた。

美里の口が声を出さずに動く。

「私、お邪魔っぽいので帰りまーす」

読唇術で読み取った言葉はそれだった。

待って美里、今2人きりにしないでぇー!

私も口パクで訴えてみたけど全くの無駄で、私の親友(多分)で学校一の小悪魔は何事もないように「後は頑張れ」の意味が込もったアイドルウィンクを投げた。

そして音をたてずに植え込みから滑り出し、軽やかにスキップしながら去って――いや、逃げていった。

…うぅ。これで完璧に2人きりになってしまった。気まずい、気まずすぎる。

「でさ。結局心都は何してたの?」

ついに来ました二度目のこの質問。

さっきは先輩に答えるフリして完全無視した私だけど、今度はそうもいかない。
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