こんな僕たち私たち
1章-6<小さな愚痴と、1対1>
「どぉぉっしてあそこまで鈍感なのかなぁ。ねぇ、クロ」

家の庭でどっかり地べたに座り込み、愛犬を抱きしめながら私は呟いた。

その愚痴に答えるように、クゥ、と細い鳴き声。元気出してご主人様、とでも言いたげに。

「クロは素直ないい子だねぇ…」

飼い主(私)に似ないでよかったわ。

ふぅっと吐いた息が白い靄になって空に吸い込まれていく様子は、見ているだけで寒い。

いくら冬好きでも今は12月、しかも夜9時の野外の気温はさすがに厳しい。

「うー寒っ」

思わず腕の中のクロを抱く力が強くなる。

私の肌にクロの体温が伝わって、そのほっこりとした温かさに何だかホッとした。

黒岩先輩も、七緒に抱きついた時こんな感じだったのかな。

余計な事を想像して、体温は上がったのに気持ちはしっかり沈んだ。

あのアホ大絶叫の後、私は下手な陸上走りで裏庭からダッシュして、そのままのスピードを崩さず家へ帰った。きっと取り残された七緒は「わけわかんねー」まま部活に行ったんだろう。
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