こんな僕たち私たち
「…アホ」

クロがひょいっと顔を上げた。

「あんたじゃないよ」

思わず苦笑い。

「…私だよ」

覗き見して、飛び出して、怒鳴って。

普通に考えれば理性とかモラルが止めてくれるはずなのに、七緒の事になるとそういうのが全部ぶっとんじゃうんだ。

──そうとうアホかも、私。

不意に頭に浮かんだのは、今日の「な?」の七緒の顔。

その屈託のなさが余計悲しい。

「…私が好きなのは、七緒なんだよ」

呟いた気持ちは誰に伝わる事もなく、冷たい空に消えていった。






















「ちょっといい?」

「はい?」

朝。今日も冬らしい澄んだ空気が最高に爽やか!

なのに。

「ちょっと顔貸してくれっつってんの」

校門を(今日は1人で)くぐった瞬間、恐い顔の黒岩先輩に肩を叩かれた。

顔貸してくれって、つまり呼び出し。

上級生が気に入らない後輩をシメる恐ろしい伝統行事だ。

…そりゃー昨日のまま終わるとは思ってなかったけども。

「今ですか?」

昨日遅くまでクロに愚痴りすぎて眠いし、そのせいで寝坊して髪ボサボサだし、リボン結んだりボタンとめたりちまちま制服に着替える時間がなくて結局今朝もジャージだし、ていうか純粋に恐いし、と断りたい理由なんか山ほどある。
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