こんな僕たち私たち
「ふふっ、ジャージ登校は今日で封印だからねー心都!」

甘い声で、でも絶対NOとは言わせない雰囲気を醸し出す美里に、私は間抜け面でこくこく頷いた。

確かに、常にジャージでいるっていうのは止めなきゃな。別に制服になったからって急に可愛く変身できるとは思わないけど、小さな変化にはなるだろう。

よし、頑張ろ。

と、秘かに決意したその時、教室のドア側にいるクラスメイトが私を呼んだ。

「杉崎、お客様だぞー」

「オキャクサマ…?」

見るとそこには、ふわふわヘアーが美しい女子生徒。

「…げ。黒岩先輩」

無表情の黒岩先輩は、私に向かって手の指だけを動かし来い来いのジェスチャーを送っている。

「あの…何のご用で?」

恐る恐る近付き尋ねると、

「あんた今、げって言ったでしょ。…何そのダサい板」

「えっ、いえ…ハイ。板は気にしないでください」

先輩はなぜか、少し笑った。

「…ちょっと、また裏庭来てくんない?」

ひ。ま、また?

先輩は、泣きたい気分でつっ立っている私の肩越しに、少し赤くなって怒鳴った。

「もう変な意味の呼び出しじゃないからっ!」

――誰に言ってる?不思議に思い振り返ると、すぐにわかった。

机に突っ伏したまま何か言いたげな顔でこっちを睨んでいる七緒への言葉だ。

「別にあたし、またシメようとか考えてるわけじゃないし」

今までの黒岩先輩と比べたら驚くほど控えめで、そして何だか信じられる態度。

「わかりました、行きます」

私は、昨日から飽きるくらいに通った裏庭へと向かった。













目的地に着くやいなや、先輩は言った。

「東君、痛かったって言ってた?」

「え?」

あぁビンタの事か、とようやく気付く。

「地味に痛てぇって言ってました」

「そう」
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