こんな僕たち私たち
「…あは」

笑えない。我ながら顔から火が出そうな本音。

「あの時はカッとなって手が出たけど、実はあたし結構びびってたんだぁ」

「びびってた…?」

先輩は苦笑いして軽く頷いた。

「『嫌です邪魔しまくります!』なんて言っちゃって。そうやってマジで逆らってきた生意気な後輩は前例がなかったもんでさー」

「…前にも何人か呼び出してるんですか」

「ま、それは置いといて。とにかくたいていの奴は怒鳴れば泣いて従うんだけど、そうじゃない相手は初めてだったから、何だコイツって感じで」

先輩は私からバツが悪そうに目を逸らし、

「…何かバカみたいだけど謝るしかねーじゃんって気になったんだよ。あんたにも、東君にも」

私は何て言えばいいのか迷って、先輩のパワーに負けないように早口になってみようかとも思った。

でも、やっぱりゆっくり口を開いた。

「…あの、私も、謝ったんです。七緒に。私の代わりにごめんって」

先輩は少し寒そうにポケットに手を入れて、私の話を聞いてくれた。

「でも七緒、私も黒岩先輩も関係なくて、俺が嫌だから動いたんだぁぁって、えっらそーに言ってました」

「…」

「だから、あいつに本気で謝ろうって考えるのは、多分…時間の無駄じゃないかと思うんです」

最後の1文で先輩は笑った。

「何、それ」

「ノンフィクションです」

確かに無駄っぽいわ、と先輩は呟いた。

それから目を眇めて私の顔を見て、

「あんた東君の事話す時、にやにやしすぎ」

こう指摘した。

「にやにや、ですか…」
何か今日の朝、七緒にも言われた気がする。

これじゃまるで、私がものすごぉぉっく怪しい人間みたいじゃない。私としてはせめてにこにこって言ってもらいたい。

「そ、にやにやしすぎ。ベタ惚れバレバレ」
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