こんな僕たち私たち
いつもよりほんの少しだけ大人びた声で、目の前の幼馴染みは呟いた。

乱闘の数分前、七緒の手によってぴかぴかに磨きあげられた床。

それに映る自分自身を、彼は睨んでいた。

「自分が…“俺”が嫌だから、動いたんだよ」

今まで聞いた中で、最も七緒らしい台詞。

だからこそ、長い長い私の人生で2回も聞けるのかもしれない。

「…だからってあいつに飛び込んでくなよぉ〜…っ」

もう、わけわかんない。

わけわかんないけど、私はありがとうとかごめんなさいを百連発しながら、顔をぐちょぐちょにして泣いていて。

「…ごめん。弱っちぃへなちょこで。」

こんな事を言って七緒もボロッボロに泣きだしちゃうもんだから、私の涙もさらに増えた。

気付いた先生に発見されるまでの10分間、冬の道場で2人で大泣き。

それこそ七ちゃん心都ちゃんって呼び合っていた頃みたいに、わんわん泣いた。

外ではまた雪が降りだしたらしく温度は急激に下がったけど、私はその寒さを少しも疎ましく感じる事はなくて。

熱く火照った涙を冷やしてくれる冷たい空気は、むしろとても素敵に思えた。

――こたつでみかんがあんなに好きな子供だったのに。









七緒と冬。
どっちも、きっとあの日好きになったんだよ。








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