こんな僕たち私たち
「うぁ!?」

「ぼけーっとすんな。自分の顔に責任持った方がいいっつったじゃん」

と、指を影絵の狐みたいな型に構えた黒岩先輩。

「…痛いです」

先輩にでこぴんされちったーエヘ。

そう言ったら仲良しっぽく聞こえるけど、黒岩先輩のでこぴんは本当に、冗談抜きで、痛い。

「あんたぼーっとしてるとホントに頭悪そーに見えるんだから、東君の前ではもっとキリッとしてな。嫌われるよ?」

人差し指を突きつけながら、先輩はびしっと言い放った。

…これは。

これは好意的なアドバイス、と受け取っちゃっていいんだろうか?

だとしたら、黒岩先輩はもう七緒の事…。

「ちょっと」

また考えが顔に出ていたのか、黒岩先輩が少し眉をつり上げた。

「念のため言っとくけど、あたし諦めたわけじゃないからねっ!確かにあの時――あんたの代わりに殴られた時の東君は、あたしの好きな可愛いメロメロプリチーな東君とは違ってたけど…でもその直後のにっこり顔には、もう悩殺だったから!つまり、チャンスがあればまた狙うからね!?」

私の顔を見据えて、勢いよく言う。

「…ただ、もう殴ったり呼び出してシメたり、そういう汚い事はしないから」

ライバルが減ったわけではなく。

これからも、サバイバルになりそう。

だけど少なくとも、今の先輩の言葉は、信じられた。

「…私も。今更ですけど、ちょっと頑張ってみようかなーとか、思ってるんです」

例えば、髪をちゃんとしてこよう、とか。

普段からいかにも気合いゼロなだぼだぼジャージは控えよう、とか。

「まだまだちょっとした事ですけど…」

「だから朝より格好がマシになってるわけか。でもその首の古くさい板は、間違ってもあんたを可愛くは見せないんじゃない?」

まぁ、確かに。

別に見た目の問題だけじゃなく、こんな肩凝りの原因は一刻も早く外したい。

でもここまで強気に「メロメロプリチー」とか言える黒岩先輩を見ると、ほんの少し対抗意識が芽生えて。

だから私は重い板を無理矢理掲げて、胸を張った。

「お揃いだからいーんですっ」

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