こんな僕たち私たち
アホか、とでも言いたげな先輩の表情。

というかその数秒後、実際に言った。

「アホか。まぁせいぜい頑張んなよ。…頑張れば、ちょっとは可能性あるんじゃない?」

「はいっ…あの、黒岩先輩」

「何」

じろっ、と無愛想な顔を向ける先輩。

「先輩は私を、こんな生意気な奴は初めてって言ってましたけど…」

強い視線を受けても、もう恐いとは思わなかった。

「…私も、呼び出しの時1対1だったのは先輩が初めてです」

──もっとも、私はあれが呼び出し初経験だったんだけど。

でも呼び出しってもっとこう、複数対1人とかだと思っていたもんで。

何だか堪えきれなくなって、私はちょっと笑った。

先輩はもう一度、

「アホか」

と言った。

でも次に、あたしはタイマン主義者なんだよと言った黒岩先輩の目は、間違いなく、ちゃんと笑っていた。






























「何か言われた?」

「え?」

教室へ戻った私に、七緒が訊ねた。

「また朝みたいな事…」

「あ、ううん全然。仲良しになったとまでは言わないけど、女同士和解成立っ」

私がニカッと笑うと(今度こそにやにやにならないよう気を付けた)、七緒は凝り固まった肩をとんとん叩きながら床に座った。

「だったらよかったよかった」

「うっわ、おっさんくさ…でも、心配どうも」

「…別に心配ってほどじゃないけど。心都ならその板とか武器にして戦いだしそうだし」

と、七緒が意地悪く笑う。綺麗な歯を覗かせ、にやり。

…う。やっぱりそこらの女の子より、全然可愛いよこの人。

ちょっと悔しい。

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