こんな僕たち私たち
「…自分は母ちゃんのへそピで号泣のくせにっ」

「い、いつの話だよっ。てか全然関係ねーじゃん!」

と、下から私を睨む七緒の視線が、ふと止まった。

まるで珍しい物でも見るように首を傾げながら、私の頭の辺りを眺める。

「…何?」

「や、何かいつもと違う気が…」

えっ――き、気付いた!?

この超絶鈍感美少女顔男が!

「嘘っわ、わかる?実は美里に寝癖直しのスタイリング剤とか借りて…っ」

必死こいて説明する私をよそに、七緒はぽんっと手を打った。

「あー、わかった!」

わかった、って。本当に!?

まだ地道な自分改造計画1日目だっていうのに――

こんなちょっとした変化に気付いてくれるなんて!

あぁ決心してよかった、やっぱりこの恋そんなに捨てたもんじゃないんだね…。

と、感動の嵐に巻き込まれた私は涙ぐみながら1人でこくこく頷いた。

「うん、やっぱり」

そう言いながら七緒がすっくと立ち上がった。

そしてその手が、どういうわけか私の頭に。

「…え。え!?何この手はちょちょちょっと七緒サン!?」

「じっとしてて」

真剣な七緒の顔が、すぐそばにある。

何!?ていうか、何っ!?

感動の嵐から一変、今度は混乱の渦が巻き起こった。

だって、七緒の手が何故か私の頭に!

4年前なら何の事なく払い除けたこの手。なのに、今はどうだ。

心臓の音が七緒に聞こえちゃうんじゃないかってくらいに緊張しきっている、自分の免疫のなさが嫌だ。






< 52 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop