こんな僕たち私たち
裾を摘んでくるっと1回転――こんな、今時小さな女の子でもやらないような芸当を朝っぱらからやってのける(しかも嬉しそう)のが、我がお母様。

「おニューよ、おニュー!ほら見て、フリルの先にピンクのビーズが付いてるのよ!素敵よねぇ」

ふりふりフリル、リボン、レース…子持ちの主婦としてはどーなの的なこの趣味は昔から、それこそ学生時代からのものらしい。

幸いと言っていいのか、一人娘である私には遺伝しなかったけど。

「これまたごてごてな…ってかちょっと待って何で私の部屋にいるの?」

「あら、母親が娘を起こしに来ちゃいけないわけ?時間になっても起きてこないから声かけにきたのよっ。そしたらなーんか幸せそうな顔して寝てるから。寝言まで言っちゃって」

「えっ」

嫌な予感。

探るような、そして明らかに面白がっている表情でお母さんは言った。

「『メリークリスマスえへへへー』って。誰と一緒にいる夢見てたのかしらねぇ」

「とっ友達だよ!友達みんなでパーティする夢!」

「ふぅーん」

疑わしそうな目。

…危ない。

何しろ、私のお母さんと七緒のお母さんは、高校時代からの無二の親友だ。

もしお母さんが私の気持ちを知ったら、すぐ親友に伝えて母親同士勝手に盛り上がるに違いない。そしてその流れから七緒にも伝わりかねないわけで。

つまり、私のお母さんに恋心がバレるのは危険って事だ。

「あぁ、パーティで思い出したわ!あのね心都、実は七ちゃんが…」

「ぐはっ」

「あらやだ。何してるのよー」

タイミングよく出てきたその名前に気を取られて、顔面強打。
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