こんな僕たち私たち
「しょうがないよ。もうチューガクセーなんだしさ」

「まぁ男の子だし…そういうの、もう照れちゃうのかしらね、七ちゃんも」

「そうそう。というわけで今年は明美さんと2人でやれば?久しぶりの親友水入らずで」

お母さんはまだ不服そうに、寂しいわーとフリルのエプロンを振ったけど、それが私の正直な気持ちだ。

確かに、クリスマスを好きな人と一緒に過ごせるのは、とてつもなく幸せな事だと思う。

でも家族同士で過ごすのは何か違うよな、と首を傾げてしまうのは――長年の腐れ縁から来る、ただの高望みなのかなぁ…。















 * * * *



「へっくし!!」

七緒のコントみたいなくしゃみが辺りに響いた。

無理もない。誰だって、冬真っ最中の12月に頭から冷水をぶっかけられたらこうなってしまうだろう。

3時間目の美術の授業中。つまり、今。

絵筆を洗うために用意されたバケツの水がひっくり返り、運悪く近くにいた七緒がとばっちりを受けてしまったのだ。

4年前の道場の取っ組み合いの時といい、七緒はよっぽどバケツの水と縁があるらしい(まぁ、あの時ぶっかけたのは私だけど)。

でも水を被った七緒は、髪の雫がきらきらと光って、何だかますます美少女っぷりが上がっているように見える。

これぞまさに。

「水も滴るいい女…?」

「おいこら心都。誰が女――へっくし!」

相変わらずの地獄耳。でも、くしゃみ混じりの反撃は気のせいか少し力なさを感じる。
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