こんな僕たち私たち

七緒はむすっとしながらも、制服を着替えるために美術室を出ていった。

「ねぇねぇ心都」

隣の美里が、左手は筆を動かしながら(美里は左利きだ)首だけをこっちに向ける。

「心都はクリスマスどうするの?七緒君と過ごせそう?」

「寂しい私にはどーせ予定がないですヨー。今年は東家とのパーティも母親組だけの参加になりそうだし、多分暇かな」

「ちょっとぉ、そんなのん気な事言って…今年が最後のチャンスかもしれないってわかってる?」

「え?」

今まで画用紙にべたべたと絵の具を塗り付けていた私の右手は、止まってしまった。

その反応を見た美里は、「食い付いたな」とばかりに目をきらりと光らせた。

「来年の今頃は受験で忙しいだろうし、高校が同じかどうかだってわかんないじゃない。だからね、クリスマスを一緒に過ごせるのなんて、彼女にでもならない限り今年が最後かもしれないでしょ?」

「そ…っかぁ、そうだよね」

あまり考えていなかった(というか考えたくなかった)けど、来年は受験なんだ。

きっとクリスマスどころじゃなくなっているんだろう。

それから高校。七緒はどこに行くのかな。成績的には同じくらいだけど、もし学校離れちゃったらもう今までみたいには会えないかもな。

…うわぁ。何か私って――。

「先の事なんっも考えてなかったんだなぁ…」

頭がくらくらしてきた。
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