こんな僕たち私たち

「だからこそ今年は一歩進むべきでしょー?」

形のいい唇を尖らせた美里は、絵筆をぶんぶん振り回した。

ピンクの絵の具が飛び散って後ろの男子の顔面を直撃したけど、なぜかそいつは嬉しそうで。

「あ、ごめーん田辺君。絵の具付いちゃった?」

「えっ!?あ、いや全然!もうかなりいい具合にほんのり染まったから!」

ほんのりどころか、顔を真っ赤にしながらわけのわからない事を口走る田辺。

「本当に?」

…出た。小悪魔美里の必殺上目遣い。

硬直状態の田辺は、すでに頷く事すら出来なくなっている。

何かあまりにも気の毒だ。

「こらこら。純情な少年を弄ぶなっての」

私が目の前で手をひらひらと振ると、美里は「弄んでないわよぅ」と言いたげに口を開きかけた。

しかし数秒後、美里は口じゃなく目を大きく見開いた。

その目がいつもの数倍きらきらと輝いて、私を見る。

「何?」

こういう時の美里は、何か「すっごく素敵!」な事を考えていたりする。

そして、その読みは的中した。

「ねーぇ、田辺君?」

美里に甘ったるく呼び掛けられた田辺は、完全に頬が緩み切っている。

「な、何?」

「田辺君クリスマスの予定なんかはどうなってるの?」

「え、俺?特に何も…」

「あらそう!」

美里の目が輝きを増す。

「じゃあ一緒にクリスマスパーティしない?私と心都と田辺君と、あと誰か――そうね、七緒君でも誘って!」

「「えぇ!?」」

私と田辺の声が、見事にハモった。

「何よぅ2人しておっきい声出しちゃって」

「だってそんな急に――ねぇ、田辺?」
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