こんな僕たち私たち
泣きたいようなキレたいような気持ちを何とか抑える。

「七緒、今年はお母さんたちのクリスマス会行かないんでしょ?」

応えはすぐに返ってきた。

「去年は引きずられて行ったけど、今年はもう勘弁。つかそれ以前にその日部活なんだよ」

「へぇー。……って部活!?クリスマスイヴなのに!?」

「うん、部活。日本武道にクリスマスなんか関係ねぇっていうのが主将の意見で。単に彼女いなくてやけくそになってるだけって噂もあるけど」

ゴーン。哀しい鐘の音色が聞こえた気がした。

「…そっかー。柔道部も大変だね」

「その日何かあんの?」

「や、別に。部活頑張れよー」

私がバシッと肩を叩くと、七緒は前につんのめった。

美里が私に、憐れむような視線を向ける。

…うぅ。我ながら虚しいなー、この展開。




























悲しい時は生クリーム。

これ、14年間の人生の中で得た私の教訓。

もっとも、食べるわけじゃなく作る方なんだけど(だって太りたくないし)。

悲しみを手動泡立て器に込め、ひたすらボウルの中のクリームに集中する。

頑張れば頑張っただけふわふわになってくれるクリームを見ると「あぁやれば出来るじゃん」ってな感じでほんの少し気分が回復する。

…まぁ早い話が、ちょっとした現実逃避?

そして私は只今、その逃避の真っ最中で。

「……」

無言で泡立て器を握り締め、銀色に光るボウルの中をがしゃがしゃやっていた。

場所は放課後の調理室。

といっても、何も個人的な理由のために教室まで貸し切りにしているわけじゃない。

今の私、現実逃避の真っ最中であると共に、れっきとした部活動の真っ最中でもある。

『料理部に入れば少しは女の子らしくなれちゃったりするかなーへへ』

そんなにやけ笑いを伴う動機で入部したのが中1の春。

それ以来私は料理部員だ。

おかげで料理はそれなりに好きになったけど、入部から1年以上たった今も女の子らしさに大した変化はない。

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