こんな僕たち私たち
「何か…とても仲良く話してるようには見えないんだけど」

「…だよな」

背の高い方の少年が、小柄な少年の胸ぐらを掴んで怒鳴っている。

「ふっざけんなよテメェ!!ナメてんのかよ、え!?誠意見せろや、誠意をよ」

ヤクザかよ。

対する小柄な少年が怯えきった声を出す。

「す、すいません進藤さん…っ」

私は、美術の時間に聞いた田辺の話を思い出した。

やんちゃ(?)でキレると周りの物をボッコボコに蹴るという1年生と、まさかここで出会うとは。

「あれが進藤かー…」

隣の七緒が呟いた。

「何かヤバそうだしとりあえず止めなきゃ――か弱い私には危険だし、七緒ファイト一発!」

と、せっかく目一杯の笑顔でエールを送ってあげたというのにこの男は。

「か弱い私って誰だよ」

「わかんない?」

「うん」

……軽い冗談だっての。

だけどやっぱり、何だかんだ言いながら七緒は昔から変わらずそういう奴で。

「悪いけど全くわかんねぇ」

そう言いながら私に鞄を預け、気合い入れなのかこの寒空の下ジャージの腕を捲る。

「…へっくし!」

格好つかない今のくしゃみは、可哀想だから聞かなかった事にしてあげよう。

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