こんな僕たち私たち
そして七緒は、怒鳴る進藤と震える少年――「謝るだけじゃ許されねぇっつってんだよ」

「そ、そんな事言ったって」「テメェ口答えすんのか、ぶっ殺すぞ」「ヒィ」――に近付いていく。

私はその背中の少し後ろにつけ、いざという時にはすぐ飛び出せるように両足に力を込めた。

「あー…ちょっとそこの、進藤」

七緒が進藤の肩を掴んだ。

「あ゛ぁ!?」

濁った怒鳴り声と共に振り返った進藤を見て、私は思わず呟いた。

「………すんげぇ」

あぁいけない言葉遣いが。

とにかく初めて間近で見る進藤は、ポロッと男言葉が出るくらいすごかったって事。

もちろん外見の話。

つんつんに立った赤い髪は限界まで重力に逆らっていて、反対に制服のズボンは地面につくほど引きずり気味。両耳には2つずつのピアス。こっちを睨み付けるその目には、よく切れるナイフのような鋭さがある。

とてもじゃないけど去年までランドセル背負って小学校に通っていたとは思えない。

「何だよ」

「この状況で呼び止められたらわかんだろーが。放してやれよ」

小柄な少年が救いを求めるように七緒を見る。

進藤は相変わらずぎろりとした目付きのまま唇の端を歪めた。

「こいつがぶつかっといてちゃんとした態度を取んねぇから指導してやってんだよ」

「胸ぐら掴んで怒鳴り散らすのが指導かよ」

「うっせぇな放っとけよ」

何だか危ない雰囲気。

本当にヤバくなった時に備えて、私は2人分の鞄を地面に降ろした。

もしそうなったら私が止めなくちゃならない。

もちろん拳での殴り合いなんか経験した事もないもんだから心臓はバクバクで、それを紛らわすために心の中で叫んだ。

あぁもう、これだから男の喧嘩なんて!

…いやまぁ女でも手ェ出す人はいるけどね、うん。









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