こんな僕たち私たち
 想い人が男に求愛されている。こんな時、私の立場としてはどうするべきなんだろう。

 ねぇ、これ、笑っていいの?女に間違えられるのはかれこれ5回目(うち4回はナンパ)の我が幼馴染みを、笑いながらからかっちゃっていいの?じゃないと――笑わないと私、辺りに漂うこの妙な緊張感に押し潰されそう。

「…えーと…し、進藤?」

 これ以上ないくらいに困った顔の七緒が、やっとまともな言葉を発した。

「“進藤”なんてそんな他人行儀すぎるっスよ、禄朗って呼んでください」

「じゃ禄朗」

「はいっ」

 名前で呼ばれて嬉しそうなろくろークン。何かもう、完全にただの恋する中学生だ。むしろそこまで素直に愛情表現できるのがちょっと羨ましい。今の私には、とても難しい事だからだ。

「そのー…お気持ちは、大変あ、ありがたいんですが」

 七緒はしどろもどろながらもそう言い、俯き加減だった顔を上げる。





「俺、男だから」





 それを聞いた禄朗は――笑った。

「はははっ、またまたそんな。それ先輩流のアメリカンジョークっスかー?」

「いやジョークとかじゃなく!つかアメリカン?」

「そんな可愛い顔で一人称俺とか言われても信じらんないっスよ。先輩はどっからどう見ても、可憐で、キュートで、華やかで、ヴェリースウィートで、男なら惹かれずにはいられようなマブい女の子っス」

 マブいって死語だよなーとか私が思っている間に、ぴきっ、と再び七緒が音をたてた。今度は引きつったわけではなく、きっと―――。

「…てんめぇ…」

 やっぱり青筋の方の音。

 当然といえば当然だけど、七緒は女に間違えられるのをものすごく嫌がる。ていうかキレる。説明しても信じてもらえない時は、特に。

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