こんな僕たち私たち
「あのさー」

 七緒はドアから入ってくる冬の空気に両手を擦り合わせながら言った。

「うぬぼれだったらゴメンナサイ」

「何」

「今日美術の時間に俺の24日の予定聞いたの、あれってもしかして田辺たちのパーティに誘ってくれるつもりだったりした?」

「あー…うん」

 私はワンテンポ遅れて頷いた。なぜなら七緒がいつもより真剣だったからだ。

「そっか。…いや、何かずっと気になって考えてたんだ」

 こんな事ずっと考えるなんてあんたどれだけ暇なんだ。とは思わなかった。

 むしろ、少し嬉しくて、少し泣きそうで。

 だから私も、いつもより素直に言えたのかもしれない。

「――今年で最後かもしれないじゃない。その…一緒に、クリスマスだーとか騒げるの。美里に言われて気付いたんだけど、来年からは受験とか色々あるし」

「…あぁ」

「で、だから、その…一緒に過ごせたらいいなーとか…思った」

 間違っても可愛気のある口調ではなかったけど、これが精一杯、今言える気持ちだった。



 傍にいるのが当たり前で。

 それはこれからも変わらないと、思った。思いたかった。

 だけどやっぱり、幼馴染みには限界があるんだ。

 私はずっと一緒にいたいよ。

 隣で君に、笑っていてほしいよ。




 七緒は私の言葉をきちんと聞いてくれて。

 そして言った。

「……部活、燃えててさ。終わるの7時くらいなんだよ」

「……うん」

「だから参加するの結構遅くなっちゃうけど。…それでもいい?」

 一瞬、思考が――というか私の全てが停止した。

「き、来てくれるの…?」

「汗くさかったら悪いけど」

 申し訳なさそうに笑う七緒の顔を、まともに見られなかった。

 失いつつあると思った私の恥じらい。

 どうやらまだ残っていたようだ。








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