渇望-gentle heart-
「あたし、やっぱり流星に会ってくる!」


居ても立ってもいられなかった。



「これから先のことなんてわかんないけど、それでもどうしても、あの人に、会って伝えたいことがあるの!」


微笑んだお母さんを確認し、あたしはきびすを返した。


出所の時間に間に合わなければ、もう二度と会えなくなるかもしれない。


大通りに出てタクシーを拾い、刑務所の名前を告げた。



「急いでください、お願いします!」


流れ星はあの日、星屑となって消えた。


それは本当に瞬く間の出来事で、きっと誰にも気付かれることはなかったろう。


でもね、星はまた生まれ変わるんだって。


だからあたしも、諦めない。


例えどんなに時間が掛かっても、あなたが生きている限り、あたしは見つけるよ。


もう輝いてなくとも、想いを届けることをやめたくはないの。



『それでも俺、きっと最後にはここに来てると思うんだ。』


『これからはさ、もうちょっとだけ、香織のこと大事に考えよう、って俺思った。』


『愛だとか恋だとかなんて、もう俺にとっては麻痺しちゃってるけど、それでもお前が泣いたり怒ったりするの見て、何かそういうの嫌だな、ってさ。』


あの日、あなたがくれた言葉達。


それは星よりずっと輝きながら、今も色褪せることなくあたしの胸の中に存在しています。


だからどうか、お願い。


もう一度だけで良いから、流星に会いたいの。

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