渇望-gentle heart-
「…流、星…」


「でもさ、だからこそ会うべきじゃないって思ってたんだ。
また繰り返しそうで、怖かったから。」


なのに、来やがって。


流星は困ったように笑い、あたしの涙をそっと掬い上げた。



「どうしてお前はこんな俺のこと見捨てねぇんだろうなぁ。」


彼は宙を仰ぎ、



「俺、今は格好良いこと言えるような男じゃないし、住む場所とか仕事とか見つけて、まずはひとり立ちするのが先だと思ってる。」


「うん。」


「けど、いつか人並になれたら、今度は胸張って会いに行くから、それまで待ってて。」


強く頷いた。


それがあたし達が出した答えだった。


ふたりで少しだけ歩くと、先ほどの叔父さんの車が待ち構えていた。


流星だけが、それへと乗り込む。



「住む場所決まったら、手紙書くから。」


「うん、待ってる。」


「ありがとな、香織。」


強く、前を向いて歩くために。


これからは、誰にも後ろ指なんか指されないためにも、今は寄り添うべきじゃない。


でも、心は傍に置いておけるから。



「流星のこと、ずっと待ってる。」








今度は勇気を振り絞り
手を伸ばしてみようと思う。



光を見つけました。


残念ながらそれは
流れ星ではないけれど、

でも輝く希望の光でした。












END

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