渇望-gentle heart-
街を歩けば、蘇る記憶がある。


あの頃を共に過ごした人たちはもういないけど、でも、今もそれぞれの道を進んでいることだろう。


幼すぎた中で、もがき、苦しんだこともあったけど、それでも出会いは奇跡と呼べるから。


ここで生きたからこそ、俺には今の百合との日々があるんだ。



「なぁ、俺、やっぱお前のこと好きだわ。」


「ちょっと、何よ、急に。」


驚く百合を横目に、



「んー、何かわかんねぇけど、言っときたくてさ。」


言葉にして伝えたいことは、山ほどある。


例えどんな形になっても、俺には変わらない気持ちがあって、だから今日ばかりは許してほしかった。


手を繋いで歩く、帰り道。



「あ、今日久しぶりに百合の手料理食わしてよ!」







ふたりで笑い合う。

繋いだ手を離さぬように。



今はそれだけで良い。










END

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