渇望-gentle heart-
――拝啓

バカップル共。


先日は手紙、ありがとう。

俺と真綾はすっかりこの島に馴染み、もうすぐ畑に植えた野菜が収穫時を迎えます。

毎日陽の光を浴びて、サーフィンを始めた俺と、相変わらず泳ぐのが下手な真綾。

つか、コイツはいつまで経っても魚を上手くさばけないんだけど。


でもまぁ、俺らもお前らに負けないくらい、笑いの絶えない日々を送ってるよ。

真綾も見違えるくらいに元気になって、ふたりで夕日に染まる浜辺を散歩するのが日課になってる。

ホント、見せてやりたいくらいに綺麗な景色なんだ。

羨ましいだろ?


手紙とか書くようなガラじゃないから、短く終わらせてほしい。



ただ、最後にひとつだけ。

俺達は、今日も明日も明後日も、ここで共に生き続けることを誓いました。

だからどうかお前らも、面倒くさいことなんか考えず、とりあえず生きてりゃ良いよ。

あ、体は大切にな!







「なぁ、手紙になんて書いたん?」


「それは言えないな。」


「何でやねん、めっちゃ気になるやんかぁ!」


不貞腐れる真綾を横目に、便箋の封を閉じた。


遠く離れてしまったふたりの元まで、この想いは届いてくれることだろう。



「つか、真綾こそなんて書いて入れたわけ?」


「ジローの悪口に決まってるやん。」


「おい、こら!」


新しい季節を迎える喜びと、変わらず隣にある笑顔。


真綾のことを愛してるって、俺、今なら胸を張って言えるよ。

< 55 / 115 >

この作品をシェア

pagetop