渇望-gentle heart-
「……え?」


「俺だってよくわかんないけどさ、子供と一緒に成長するとか言うし、そんなもんなんじゃない?」


繋いだ彼女の手は、今日ばかりは少し冷たくなっていた。


怖がらないで、愛しい人よ。



「つか、それって俺との子供がほしい、ってことだよな?」


意地悪く聞いてみれば、真綾は瞬間に顔を真っ赤にさせる。


俺は笑った。



「俺、最近思うんだけど、テレビで大家族の特集とかやってんじゃん?
あれって何か憧れるってゆーかさ。」


想像しただけで、饒舌に話してしまう。



「真綾とそういうのも悪くないのかもな、って。」


「どういう心境の変化なん?」


「だからぁ、自信だとかそんなちっちゃいことで悩むなんて、お前らしくねぇぞ、ってこと。」


言ってやると、彼女は一瞬きょとんとした後で、何故だか腹を抱えて笑い始めた。



「ホンマ、さすがジローはO型やね。」


それって何の関係もないと思うんだけど。


でも、真綾が笑ってるなら、俺にはそれだけで良いってゆーか。



「お前の心臓の病気、ちゃんと完治したらさ、いっぱい家族を作ろうよ。」


だってそれ、絶対楽しいよ。


これから先、金持ちになれる見込みは残念ながらないけどさ、でも愛で溢れる予定だから、オールオッケイ。


俺と真綾なら、きっとそんな家庭を築けるはずだから。

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