渇望-gentle heart-
すでに連絡船は出向してしまった後のようで、船着場には人影はない。
俺はその辺りを探すように歩き回っていると、とてもこの島には似つかわしくないような洒落た帽子を被った女性がひとり、何か紙切れを手にきょろきょろとしている。
目が合ったその人の顔を見て、俺はひどく驚いた。
「あの!」
気付けば言葉が口から洩れる。
「もしかして、真綾のお母さんじゃ…」
少し幸の薄そうな、でも同じ顔立ちをしている40代半ばくらいの彼女。
真綾と目鼻立ちがそっくりだ。
あの人は可哀想な女やねん、と、いつだったかアイツから聞いたことがあるけれど。
「ママ!」
声に振り返ると、先ほどの俺と同じように息を切らした真綾の姿。
そして脇目も振らず、目前の女性へと飛びついていた。
真綾の目には、大粒の涙が伝っている。
「…本物のママやっ…!」
その光景に、気付けば俺も困ったように笑っていた。
真綾のお母さんという人は、病気を理由に離婚の際、親権を取れず、子供と引き離されたらしい。
それ以来、真綾はお母さんと会うことさえも許されず、父親に虐待されていたのだとか。
真綾はそんなお母さんが気掛かりだと、いつも言っていた。
だからこの島に来た際、勇気を出して手紙を書いたらしいけど、でも一度として返事はなかったはずなのに。
「…うち、ホンマ会いたかってんっ…!」
俺はその辺りを探すように歩き回っていると、とてもこの島には似つかわしくないような洒落た帽子を被った女性がひとり、何か紙切れを手にきょろきょろとしている。
目が合ったその人の顔を見て、俺はひどく驚いた。
「あの!」
気付けば言葉が口から洩れる。
「もしかして、真綾のお母さんじゃ…」
少し幸の薄そうな、でも同じ顔立ちをしている40代半ばくらいの彼女。
真綾と目鼻立ちがそっくりだ。
あの人は可哀想な女やねん、と、いつだったかアイツから聞いたことがあるけれど。
「ママ!」
声に振り返ると、先ほどの俺と同じように息を切らした真綾の姿。
そして脇目も振らず、目前の女性へと飛びついていた。
真綾の目には、大粒の涙が伝っている。
「…本物のママやっ…!」
その光景に、気付けば俺も困ったように笑っていた。
真綾のお母さんという人は、病気を理由に離婚の際、親権を取れず、子供と引き離されたらしい。
それ以来、真綾はお母さんと会うことさえも許されず、父親に虐待されていたのだとか。
真綾はそんなお母さんが気掛かりだと、いつも言っていた。
だからこの島に来た際、勇気を出して手紙を書いたらしいけど、でも一度として返事はなかったはずなのに。
「…うち、ホンマ会いたかってんっ…!」