渇望-gentle heart-
公民館にはとても島民みんなは入りきらないので、式は身内だけで執り行われ、それから無事に終わったようだ。


終了を出入り口で待ち構えていた俺達は、出てきた新郎新婦を祝福で迎え入れる。


おめでとう、おめでとう、と四方からの声。


それに応えるようにピースをするサムと、少しはにかんだまどかの笑顔が眩しかった。


この島には似つかわしくないウエディングドレスだが、その汚れない純白さは、まるで幸せを映し出しているかのよう。


幸せにな、と俺は、心の底で呟いた。



「まどか、ホンマに綺麗やなぁ。」


「そうだね。」


真綾とまどかは年が近いこともあり、今じゃ一番の仲良しだ。


太陽に好かれたふたりとでも言えば良いか、空でさえも、今日のこの日を照らしている。


不意に、まどかは真綾の元へと歩み寄ってきた。



「まあちゃんに、これあげる。」


差し出されたのは、ブーケ。



「次は、まあちゃんの番だからね。」


その言葉を受け、真綾は涙ぐんでしまう始末だ。


花嫁からブーケを受け取った女性は次に結婚する、なんて言うけれど、その所為で俺達への歓喜の声まで上がってしまう。


どうしたものか。



「ま、次にこの公民館使うのは俺らっつーことで、予約でもしとくか。」


アホか、と真綾は涙ながらに俺に言う。


笑いが起きて、幸せが溢れている、そんな島での昼下がり。

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