渇望-gentle heart-

shooting star

「香織、もう一本空けようぜ!」


煌びやかなシャンデリアの下で、含みを持つ妖艶な瞳が細められた。


ホストの流星は、現在このオーシャンでナンバーワン。


どう見ても自分に自信を持っていて、おまけに腹の立つくらいに自己中な、けれどあたしが連日のように指名を繰り返している男。


文句が渦を巻く脳内とは裏腹に、良いよ、という言葉が口から簡単に漏れてしまう始末。


出会った時から負けっぱなしだ。



「あ、今日さ、行くから。」


それが、この男。


色も枕もお手の物とでも言えば良いか、呆れた思考さえとっくに捨てた。



「愛してるよ、香織。」


着飾ったスーツに、王道ホストの顔が栄える。


5分と卓にいてくれないくせに、あたしは彼のために、今までいくら落としただろう。


考えることも馬鹿らしい。


人はホストに貢ぐあたしを滑稽な目で見るけれど、でもそれでしか満たせないの。


自分が嫌い。


だから憧れたんだ、流星に。


この夜で一番の輝きを放ちながら、光を纏っている男。


ただ、焦がれるまでに欲しかった。

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