渇望-gentle heart-
街を歩いていた時、ジローという得体の知れない男に声を掛けられた。


別にAVに出たって良いとすら思っていたあたしが始めたバイトは、ホテル・ヘルス。


お金が手に入るのなら、何だって良かった。


フリーターにだけはならないで、と親に懇願されて入学した大学は、だけども馴染めるはずなんてない。


男女仲良しクラブのようなノリも、どこか派手なあたしを敬遠するような会話も、全てに居場所が見つけられなかったから。


もうずっと、どこにいたって疎外感が付き纏ったままだ。


その度に、買い物で、男で、酒で、全てを誤魔化し、一瞬の快楽に浸っていた。


そんなある日。



「ねぇ、ホスト行かない?」


同じ大学でキャバクラのバイトをしている彼女に誘われ、まぁ良いや、という軽い気持ちで訪れた、オーシャン。


そこであたしは、ひとりのホストに目を奪われた。



「流星です、よろしくね。」


まるで自分が世界で一番だと言わんばかりの、その瞳。


劣等感の塊だったあたしの目には、それは本当に眩しいまでに映り、一瞬にして虜になった。


オーラとでも言えば良いか、彼を包む全てに焦がれた。


誇れることのひとつもないあたしには、強気で自信に満ちた流星は、ある意味では憧れだったのかもしれないけれど。


翌日、ひとりでオーシャンに行ったあたしは、この輝きを纏う男に指名を入れた。


流星は当然のように色を掛けてきたし、それが好都合だったあたしは誘いに乗った。


百の愛の言葉よりずっと、体を繋いでいたかったんだ。


あたし達は、至極簡単な関係になった。


それが、始まり。

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