渇望-gentle heart-
行為を終えてみれば、もう空は薄っすらと白み始めていた。


体を起こした流星は、あたしにいつものモノを差し出し、「吸うだろ?」と目で問うてくる。


見かけは煙草に似ているが、実際は乾燥大麻を煙草の巻紙に巻いたものだ。


シンナーから始めたあたし達の“遊び”は、今やこんなものに依存するまでになってしまった。


煙草だって辞められないあたし達なのに、善悪ではもう止められるはずもない。



「煙草の方がずっと有害だって言うしね。」


理由付けの一言を添え、指に挟んだそれに火をつける。


煙を肺の奥まで一気に吸い込み、ゆっくりと吐き出してから、宙を仰いだ。


奇妙な脱力感と、不思議な高揚感が体中に沁み渡り、自然とくだらない思考が消え去っていく。


流星はこちらを確認するように一瞥した後で、あたしの指にあったモノを抜き取り、自らも煙を吸い込み吐き出した。


世界が遮断されていく感覚。


遠いどこかで聞こえる耳鳴りのようなものに耳を傾けながら、あたし達は一本の大麻煙草を共有した。






寂しいよ。

怖いよ。

助けてよ。




いつも顔を出すそんな弱さや不安を恐れるあたし達が、逃げたもの。


全ての人に愛されたい、なんて望むほどの馬鹿ではない。


けれど、それでもこんなあたしと流星の時間だけは、誰にも邪魔はされたくなかった。


彼が心の奥底でそれを望んでいる気がするの。


だからあたしは、あなたが例えどこまで堕ちようとも、最後まで傍にいてあげるからね。


ねぇ、流星?

< 77 / 115 >

この作品をシェア

pagetop