渇望-gentle heart-
それから、若菜と街で、手に持てないほどの買い物をした。


目ぼしいものは端から買っていったし、店員に似合うと言われたものは、大して可愛くなくともお買い上げ。


それがいつものあたしのショッピングの仕方だ。


お金を払っている間だけは満たされた気分になれたし、ちやほやされればそれなりに嬉しいとも思う。


けれどいつだって、家に帰れば全てが色褪せて見えるのだけれど。



「いやぁ、今日も買ったねぇ!」


「だよねぇ!
学校なんか行くよりこっちのがよっぽど楽しいよ!」


大荷物でカフェに居座るあたし達は、やっぱり店員から怪訝な顔をされていたけれど。


周りの迷惑なんかも気にせずに、自分を大きく見せることが強さに繋がるのだと思っていたかったのかもしれない。


得意げに煙草の煙を吹かして見せ、優越感に浸るあたし。



「ねぇ、これからヤス達も呼ばない?
んで、車出させて、どっかパーッと騒げるとこ行こうよ!」


若菜はそう言って、あたしの返事も聞かずに携帯を取り出した。


この街に、お金に狂っていた。


男に、酒に、クスリに、全てに惑わされていたのかも。


もちろん自覚症状なんてなく、だから感覚さえも麻痺し、こんな毎日を繰り返していた。


騒いで、セックスをして、妙な連帯感を得た気になって、自分を誇示していたかったのかもしれない。


けれどいつだって満足できない、愚かなあたし。


類は友を呼ぶ、なんて言うけれど、あの頃、ろくな意思もなく、だから抜け出せなかったのかもしれないね。


全てが壊れてしまった今となっては、馬鹿な自分を憂いてしまうよ。

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