渇望-gentle heart-
気付けば流星との関係も、二年になろうとしていた。


百合とオーシャンで喧嘩別れのような形になっても、それでもあたしが捨てられなかった男。


けれどこの関係は、今も何ひとつ進展はない。


前よりもっと増えたブランド物と、比例するように増していく、孤独感。


いつだって彼は、あたしを一番に見ることはない。



「香織さん、そんな怒らないでくださいよ!」


「そうですよ。
流星さん、あのおばさん帰したらすぐに戻ってきますって!」


ヘルプの男達は、そう言って機嫌を取ろうとする。


あたしの相手はこんなやつらに任せておいても良い、とでも思っているのだろうか。


ホスト如きに期待なんてしていないけれど、でもちょっと冷たすぎるよ、流星。


お金しか見ていないのは知ってるけど、それでももっとマシな言葉を掛けてくれればまだ、優しさを感じて騙されてあげるのに。



「もう良いよ、あたし帰る。」


苛立ち紛れに立ち上がり、引き留めようとする彼らを振り払って、店を出た。


どこの店で飲み直そうかと思っていた刹那、「香織!」と腕が掴まれ、あたしはびくりと肩を上げる。


振り返ってみれば、息を切らした流星の姿に、ひどく驚かされてしまった。



「どうして勝手に帰ったりするわけ?」


彼は不貞腐れた子供みたいな顔をする。



「今日はラストまでいるってお前言ってたろ。
つか、あれくらいで怒って店を飛び出すなんて、どうかしてるよ。」


それってあたしが悪いってこと?


言い掛けた言葉を飲み込み、悔しさの中で唇を噛み締めた。

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