渇望-gentle heart-
「帰るの?」


「ハルの数いるカノジョに鉢合わせたくなんてないからね。」


そう言って背を向けようとした時、香織ちゃん、とハルによって呼び止められた。



「俺には香織ちゃんがあんなホストに貢ぐこと、到底理解出来ないけどな。」


「何それ、口説いてる?」


「そういうんじゃないけどさ。
何が良いのかなぁ、って思ってね。」


そんなの、あたしが聞きたいくらいだよ。


けどね、



「アイツ、どうしようもないダメな男だけど、あたしにとってはハルよりずっと魅力的なの。」


「そういう振られ方は初めてだな。」


「馬鹿ね、あたしは年下なんかに興味はないのよ。」


笑って部屋を出た。


それがハルとまともに顔を合わせた、最後だった。





あたしは弱いから、いつも逃げ道を作るように他の男をキープしていたね。


けど、結局は、戻る場所はいつもひとつ。


友達を失っても、詩音さんやジローに頭を下げてでも、失いたくないと思っていた人。


空を見上げたって、こんなにも濁った場所じゃ、やっぱり今日も流れ星なんて拝めやしない。


願えば叶うなんてことも思わない。


でも、だからこそ、あたしは流星を求めようとしてしまう。




悔しいけれど、

それだけが、
今のあたしが出せた答え。







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