渇望-gentle heart-
ぽつりと漏らされた言葉が、沈黙に溶けた。


流星ももしかしたら、ただ愛されたかったと思っている側の人間なのかもしれない。


それが嘘でなければと、あたしは思う。



「ホストになったのだって、もしかしたら俺、女という生き物を憎んでいたのかもしれない。」


愛と憎しみは紙一重、なんて言うけれど。


流星が本当に求めていたのは、クスリでもお金でもなく、母の愛情だったのだろう。



「人より上に立って、たくさんの金を手にしようって思ってたし、所詮は女なんかチョロいもんだと思ってた。」


けどさ、と彼は言う。



「結局、一時の感情じゃなくこんな俺のことを好いてるのなんて、香織だけなんだよな。」


それはつまり、どういうこと?


軽くパニックになってしまいそうな思考を引き戻し、あたしはそっと流星の顔を見た。


何ともバツが悪そうな彼。



「恋愛感情なんて必要ないけど、俺には香織が必要なんだ。」


告白、なのだろうか。


よくわからないけれど、それでもたったこれだけの台詞で許してしまうあたしは、やっぱり馬鹿だ。


いつだって流星は、あたしの心を惑わせるから。


彼の体に腕を回し、キスをすると、互いの寂しさを共有できた気分になる。


色枕で、最低なホストだけれど、それでもこの二年もの間、あたし達が繰り返してきたことは、少しは何かの形になっただろうか。


体を重ねた後で、流星の腕の中で眠った。

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